お盆や夏の長期休暇の時期になると、「夏季休暇」と「有給休暇」の違いって何だろう?と感じたことはありませんか?
どちらも「お休み」ですが、制度の成り立ちや使い方がまったく異なります。
この違いを知らないと、気づかないうちに有給休暇を消化されてしまうケースもあります。
今回は、夏季休暇と有給休暇の意味や違い、法律上のルール、違法・合法の境目、パート・アルバイトの有給計算例まで、やさしく解説します。
夏季休暇とは?
夏季休暇は、会社が独自に決める特別休暇です。
多くはお盆の時期に設定されますが、期間や日数は会社ごとに異なります。
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例1:8月13日〜15日の3日間(製造業などの一斉休業)
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例2:7月〜9月の間で3日間を自由に取得(柔軟型)
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例3:制度なし(サービス業・小売業など繁忙期は通常営業)
厚生労働省や各種調査によると、日本企業の夏季休暇の平均日数は約4.4日。
また、有給扱いにするか無給にするかは就業規則での定めによります。記載がなければ無給の場合もあります。
「休日」と「休暇」の違い
似ているようで意味は異なります。
用語 | 意味 | 例 |
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休日 | 労働基準法で定められた「働かなくていい日」。週1日以上が必須。 | 日曜、祝日、シフト休み |
休暇 | 本来は勤務日だが、特別な理由で休める日。 | 夏季休暇、有給休暇、育児休暇 |
有給休暇の基本ルール
有給休暇(年次有給休暇)は、お給料をもらいながら休める労働者の権利で、労働基準法第39条で定められています。
取得条件
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入社から 6か月以上 継続勤務
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出勤率 8割以上
条件を満たせば、正社員だけでなくパート・アルバイト・派遣社員も取得可能です。
正社員の有休日数(目安)
勤続年数 | 付与日数 |
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6か月以上 | 10日 |
1年6か月以上 | 11日 |
2年6か月以上 | 12日 |
3年6か月以上 | 14日 |
4年6か月以上 | 16日 |
5年6か月以上 | 18日 |
6年6か月以上 | 20日 |
有給休暇の取得義務と罰則
2019年4月の法改正により、企業は年5日以上の有給休暇を労働者に取得させる義務ができました。
この義務を守らない場合、1人につき最大30万円の罰金が科されることがあります。
つまり、会社は「自由に取らせない」のもNGですが、「勝手に充当する」のもNGです。
有給休暇の申請方法と注意点
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申請期限:会社によって「◯日前まで」などのルールあり
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方法:口頭より、メールや社内システムで申請すると証拠が残ります
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時季変更権:繁忙期や業務に重大な支障がある場合、会社は取得日を変更できます
上司への伝え方例
「○月○日に有給休暇を取得したいです。業務の引き継ぎは事前に行います。」
夏季休暇を有給休暇に充てるのは違法?
結論:原則として違法です。
有給休暇は労働者が自分で取得日を決められるため、会社が勝手に「夏季休暇は有給で処理します」と決めることはできません。
勝手に消化されていないかチェック
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給与明細に「有休」と記載されていないか
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勤怠記録と照合
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就業規則で夏季休暇の扱いを確認
違法にならないケース(計画的付与制度)
「年次有給休暇の計画的付与制度」は、必ず5日以上の有休を自由取得させた上で、残りの日数を会社が指定できる制度です。
労使協定を結び、就業規則にも記載する必要があります。
取得方法には次の3タイプがあります。
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全員一斉型:全社で同じ日に有休取得(例:お盆休み全員休業)
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交代制型:部署ごとに交代で取得
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個人別型:個人ごとに事前に決めた日に取得
この制度があれば、夏季休暇を有給で処理しても合法です。
違法と合法のケース比較
ケース | 違法・合法 | 理由 |
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会社が一方的に有休充当 | 違法 | 労働者の取得権を侵害 |
計画的付与制度で合意済 | 合法 | 労働基準法に基づく運用 |
パート・アルバイトの有給計算例
週の勤務日数 | 6か月勤務後の付与日数 |
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週3日 | 5日 |
週4日 | 7日 |
勝手な有休消化を防ぐ方法
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毎月の給与明細を確認
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就業規則の休暇欄をチェック
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勤怠記録を保存し、残日数を把握
公的機関への相談先
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労働基準監督署(最寄りの労働局)
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総合労働相談コーナー(厚生労働省)
相談時は、給与明細・勤怠表・就業規則を持参するとスムーズです。
FAQ(よくある質問)
Q1. 夏季休暇中に出勤したら振替はある?
→ 就業規則に定めがあれば可能。無い場合は要相談。
Q2. 夏季休暇中の給料は出る?
→ 有給扱いなら支給、無給扱いなら支給なし。
Q3. 有給休暇は時間単位でも取れる?
→ 会社の制度によりますが、導入企業は増えています。
まとめ
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夏季休暇=会社が決める特別休暇(法律義務なし)
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有給休暇=法律で保障された権利
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年5日以上の取得義務あり、違反企業には罰則も
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会社が勝手に有休を充当するのは原則違法
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計画的付与制度なら合法な場合あり
自分の休暇制度を正しく理解して、大切な有休を守りましょう。