「還暦」という60歳という特別な年齢を祝う日本の伝統について、その背景とお祝いの方法を探ります。
還暦の意味や祝い方、さらに赤いちゃんちゃんこを着る理由についてもご紹介します。また、現代における還暦のお祝いのスタイルについても触れます。
還暦とは?
還暦は、60歳の誕生日を祝う伝統的な風習です。「暦が還る」という言葉は、干支と十干が60年周期で一巡することを指します。
干支には12種類の動物が、十干には10の要素が含まれています。このように60年周期で一巡することから、還暦は人生の大切な節目と考えられています。
例えば2024年は「甲辰(きのえたつ)」の組み合わせの年です。
「甲(きのえ)」は十干の中で最初に位置し、生命や物事の始まりを意味し、「辰(たつ)」は力強さや成功を象徴しており、革新と新しい始まりの象徴とされています。
還暦のお祝いは、いつ?
還暦のお祝いは、通常60歳の誕生日に行われます。
過去には、数え年で61歳のお正月から節分までの間に祝うことが一般的でしたが、現代では60歳の誕生日に祝うことが多いです。
還暦の次の節目として祝われるのは「古希」です。祝う日に厳しい規定はなく、60歳の誕生日の前後や家族が集まりやすい日に祝うのが良いでしょう。
還暦祝いの起源は?
還暦祝いの起源は、古代中国にさかのぼります。日本には奈良時代に伝わりました。
当時60歳を迎えることは、現代よりも希なことで、「第二の人生の始まり」や「生まれ変わりの年」として大切にされていました。
こうして、長寿を祝うこの風習は日本に定着しました。
赤いちゃんちゃんこの起源とは?
還暦のお祝いと言えば、目を引く『赤いちゃんちゃんこ』が特徴的ですね。
赤いちゃんちゃんこを選ぶ、または贈る背景には、
・赤ちゃんに戻る
・赤には魔除けの意味がある
という2つの理由があります。
60歳で迎える還暦は、「人生の一周が完了し、新しいスタートが切られる」という意味を持っています。
そこから、「赤ちゃんに戻る」というコンセプトが生まれ、子どもの袖なしの着物であるちゃんちゃんこと、魔除けの赤色が組み合わされるようになりました。
この習慣は江戸時代に広まったとされており、その時代から赤いちゃんちゃんこに加えて赤い頭巾をかぶる風習も生まれました。
この頭巾は「大黒頭巾」として知られ、当時は高齢者が好んで被っていたものです。
現代の還暦祝いには何を選ぶべき?
現代では、60歳でもまだ元気に活動している方が多く、現役で働いている人も少なくありません。
現在の還暦祝いは、長寿を祝うというよりも、人生の新しい章への移行を祝うイベントとして位置づけられています。
ここでは、現代の還暦祝いに人気のアイテムをいくつかご紹介します。
赤い小物
普段使いに便利な赤い小物は、還暦のお祝いにぴったりです。帽子、ネクタイ、スカーフ、エプロン、靴下、アクセサリーなどがお勧めです。赤は派手な色ですが、アクセントとして活用すればおしゃれに見えますし、控えめな色を好む方でも取り入れやすいアイテムを選ぶといいでしょう。
旅行
ご家族や大切な人への感謝を込めて、リラックスできる旅行をプレゼントするのもいいですね。特に「還暦のお祝いには温泉が最適!」とよく言われます。
グルメギフト
旅行が難しい方や、まだ忙しい方には、おいしいグルメギフトが喜ばれます。ただし、アレルギーや好みに注意して選ぶことが大事です。
名入れ小物
名前入りのペンやコップ、タオルなどは、特別感があり、使う度に嬉しい気持ちがよみがえります。
フラワーギフト
特に女性には、生花やプリザーブドフラワーなど、長く楽しめるフラワーギフトがおすすめです。
お酒
お酒を楽しむ方には、名前入りの特別なラベルのお酒が好まれるかもしれません。
日本酒を贈る際には、一升瓶2本で一対としてお祝いの気持ちを表すという風習があります。
この伝統は、日本独特の美意識と敬意を込めた贈り物の文化から来ています。
但し、贈る本数には特に注意が必要で、2本や6本といった偶数の本数が推奨されますが、4本のみは避けるべきです。
これは、数字の「4」が「死」と発音が似ているため、不吉な数字とされるからです。
しかし、奇数の本数も特定の状況下では喜ばれることがあります。例えば、結婚式や出産など、おめでたい日には3本や5本、7本といった奇数での贈り物が良いとされています。
ただし、一般には2本や、末広がりの意味を持つ8本など、縁起の良い数字が選ばれることが多いです。
このように、日本酒を贈り物として選ぶ際には、贈る相手の感情や文化的背景を考慮し、適切な本数を選ぶことが大切です。
縁起を担ぐこの習慣は、日本の深い文化的意義と相手への敬意を示す美しい方法です。
まとめ
還暦は、60歳の誕生日を祝う伝統的な行事です。
この行事の背景には、干支と十干が60年で一周するというサイクルがあり、「新しい人生の始まり」や「再出発の年」といった意味が込められています。
還暦祝いでよく贈られる赤いちゃんちゃんこは、これらの意味を表しており、江戸時代には「魔除けとしての赤色」と「赤ちゃんへの回帰」という意味を持たせて贈られるようになりました。
現代の還暦は、ただの長寿祝い以上のものとして捉えられ、人生の大切な節目としてのお祝いへと意味が拡がっています。お祝いの形態も多岐にわたっています。
人生で一度きりの還暦の際には、その人に相応しい特別なプレゼントを選んで、家族や友人と共に心に残るお祝いをしましょう。