春の空を気持ちよさそうに泳ぐ鯉のぼり。 こどもの日が近づくと、街や住宅街のあちこちで見かけるようになりますね。
でもその鯉のぼり、なぜ飾るのか、その意味や由来を知っていますか?
この記事では、「こどもの日=鯉のぼり」というイメージのルーツや、飾りに込められた願い、さらには現代の飾り方まで、わかりやすく解説します。
鯉のぼりの由来は武士の風習にあった?歴史から読み解くルーツ
鯉のぼりの起源は、室町時代の武家文化にさかのぼります。
当時、武士たちは戦場で「旗指物(はたさしもの)」と呼ばれる家紋入りの旗を背負い、自分の存在を示していました。 この旗指物を端午の節句に屋外に飾ることで、邪気を払い、家の繁栄や無病息災を祈るという風習が生まれたのです。
その後、町人や庶民にも広まり、「武者絵のぼり」や「節句のぼり」と呼ばれる立派なのぼり旗が登場。 江戸時代中期には、中国の故事『登竜門』をモチーフにした「鯉」がのぼりに描かれるようになります。
登竜門伝説とは── 黄河の激流「竜門」を登りきった鯉が、天に昇って龍になるという話。 ここから「どんな困難にも打ち勝ち、立派に成長してほしい」という願いが、鯉に託されるようになったのです。
つまり鯉のぼりは、「健やかな成長」や「たくましさ」を願うシンボルなんですね。
鯉のぼりの色や吹き流し、矢車の意味は?家族と魔除けの象徴
鯉のぼりの色や飾りには、それぞれ意味があります。
- 真鯉(まごい)=黒:お父さん
- 緋鯉(ひごい)=赤:お母さん(※もともとは男児を象徴していた)
- 子鯉(こごい)=青や緑など:子どもたち
もともとは真鯉1匹だけでしたが、明治時代に緋鯉が加わり、昭和以降は家族構成を反映する形で複数の鯉を飾るスタイルが定着しました。
昭和初期に作られた童謡『こいのぼり』では、「大きい真鯉はお父さん、小さい緋鯉は子どもたち」と歌われており、この時代の家族観も垣間見えます。
また、鯉の上部にある「吹き流し」や「矢車」にも深い意味があります。
- 吹き流し(青・赤・黄・白・黒)
- 中国の陰陽五行説に由来し、木(青)・火(赤)・土(黄)・金(白)・水(黒)を表す。
- 魔除け・厄除けの意味が込められています。
- 矢車(風でくるくる回る飾り)
- 災いがどこから来ても跳ね返すという願い
- 天球(てんきゅう)
- 神様に子どもの誕生を知らせる役割があるとされる金銀の飾り
それぞれのパーツに、親が子を想うやさしい気持ちが込められているのです。
現代の鯉のぼりはどう飾る?暮らしに合ったスタイルが主流に
昔のように「屋根より高い鯉のぼり」は、住宅事情により見かける機会が減りました。 しかしその代わりに、多様でオシャレな鯉のぼりが増えています。
現代の主な鯉のぼりスタイル
- ベランダ用鯉のぼり:短いポールで取り付けやすく、マンションでもOK
- 室内スタンド型:玄関やリビングに飾れるコンパクトサイズ
- 北欧風・ナチュラル素材:布製や木製など、インテリアにも馴染むデザイン
- 名前入りオーダーメイド:SNS映えも抜群で、人気上昇中
中には、使用後にポーチやクッションカバーなどにリメイクできる商品も登場しています。 飾り方は変わっても、「こどもの成長を祝いたい」「元気に育ってほしい」という気持ちは昔と同じです。
無理なく、今の暮らしに合った形で伝統を楽しむのがベストですね。
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よくある質問:鯉のぼりの疑問をQ&Aで解決!
Q1:女の子がいる家でも鯉のぼりを飾っていいの?
もちろんOKです! 元々は男の子のための行事でしたが、現在は「すべての子どもたちの健やかな成長」を願う風習として定着しています。 性別にこだわらず、家族みんなで楽しみましょう。
Q2:鯉のぼりはいつから飾って、いつ片付ければいい?
- 飾り始めの目安:4月中旬〜4月下旬(晴れの日に)
- 片付けるタイミング:5月5日(こどもの日)を過ぎたら
- 収納時の注意:湿気を避けて、風通しのよい場所に保管
※強風や雨の日は、鯉のぼりが傷む原因になるため、注意しましょう。
Q3:使わなくなった鯉のぼりはどう処分する?
愛着のある鯉のぼり、捨てるのはもったいないですよね。 以下のような方法があります。
- 神社やお寺で供養してもらう(人形供養と同様の扱い)
- 布小物やポーチにリメイク
- メモリアルインテリアとして再利用
思い出を大切にしながら、新たな形で残すのも素敵です。
⇒ 五月人形の処分方法|処分の時期・供養・リサイクル・粗大ごみ対応まで丁寧に解説
鯉のぼりに込められた想いを、次の世代へつなぐ
鯉のぼりは、単なる装飾ではなく、 「どんな困難にも負けず、たくましく成長してほしい」 という親の深い願いが込められた、日本の美しい伝統文化です。
時代や暮らし方が変わっても、その本質は変わりません。
こどもの日、青空を見上げて鯉のぼりを眺めるそのひとときが、 家族の会話や笑顔につながりますように。 そして、この温かな文化が、未来の子どもたちへ自然に受け継がれていきますように──。